【臨床心理士が解説】子どもの「嫌だ!」や癇癪を減らす気持ちの伝え方と感情コンピテンスの育て方


 1. なぜ「気持ちを言葉にする」のが難しいの?


「もうお兄ちゃんなんだから、泣かないで言葉で言ってごらん」
「お友達に『貸して』って言えばいいんだよ」

大人はついそう声をかけてしまいがちですが、子どもにとって
「自分の心の中にあるモヤモヤした気持ちを自覚して、適切な言葉を選んで相手に伝える」というのは、とても高度なステップの連続です。

特に発達障害のあるお子さんは、
同年代に比べて言葉の発達がゆっくりな場合も多く、
言葉が出ない代わりにお友達とトラブルになってしまったり、
いろんな気持ちがすべて「嫌だ!」になって癇癪(かんしゃく)を起こしてしまったりすることもあります。



これらは決して「わがまま」ではなく、
「伝えたいけれど伝え方が分からない」というSOSサインです。


2. 臨床心理士の視点:お子さんの脳内や心理で起きていること


特性を持つ子どもたちが気持ちを言葉にできない背景には、
脳の特性や発達のステップが大きく関係しています。

① 自分の気持ちを自覚するのが苦手で、表現力も未発達 心の中の感情を自分自身で客観的に気づくことが苦手なことにプラスして、
それを言葉で表現する力がまだ未発達な状態です。

② 「伝わらなかった失敗経験」の記憶が残りやすい 過去に「言っても分かってもらえなかった」という失敗経験があると、
それが強い記憶として残りやすく、話すこと自体をあきらめてしまうことがあります。

③ 気持ちを伝える語彙(ごい)が少ない 適切な言葉を知らないと、あらゆるモヤモヤがすべて
「嫌だ」「きらい!」などに集約されてしまいます。

④ 相手の表情や状況を読み取るのが苦手(「心の理論」の発達がゆっくり) 発達障害のあるお子さんは、他者にも自分とは違う心があることに気づく力(心の理論)の発達がゆっくりな傾向があります。
そのため、相手の表情やボディランゲージ、前後の文脈を読み取ることが苦手なことがあります。



3. 今日からできる具体的な関わり方


近年、子どもの感情を理屈ではなく「能動的に学べるスキル」として捉える「感情コンピテンス(感情力・感情リテラシー)」という考え方が注目されています。

学校生活という新たな環境に適応するための就学準備としても、この感情教育が非常に重要になってきます。
周囲の大人ができる3つのアプローチをご紹介します。

① 大人が気持ちを1〜2択で代弁してあげる(感情理解のサポート)

お子さんが泣いていたり怒っている時、「どうしたの?」とオープンクエスチョンで聞くとフリーズしてしまうこともあります。
そんな時は、「悲しかった?それともくやしかった?」と、まずは2択から選べるように声をかけてみてください。
自分や相手の気持ちに気づく力(感情理解)の土台となり、もどかしさから生じていた癇癪が減ることもあります。

② 「やだ!」「嫌い!」を豊かな感情語に置き換える(感情表出のサポート)

子どもが「嫌だ!」とパニックになっている時に、大人が適切な言葉で気持ちを交通整理してあげることが大切です。
大人が豊かな言葉を使って応答的に関わることが、子どもの感情の語彙を増やす一番の近道です。

③ 「相手の気持ち」を言語化して仲介する(感情制御のサポート)

トラブルが起きたときは大人が間に入って、「〇〇君は、今これを使いたくて悔しかったんだって」などと言語化します。
言葉での理解が難しそうな場合は、落ち着いているときに紙に因果関係や流れを分かりやすく書くなどして、視覚的に伝えてあげてください。
状況に合わせて自分の感情をコントロールする(感情制御)の力や、他者の感情を区別する学びにつなげていくことができます。


📌 ちなみに...

「自己主張」に比べて「自己抑制」はとてもゆっくりと発達します。

自己主張 3〜4歳頃に急激に発達
自己抑制 3〜6歳頃にかけてゆっくりと発達

将来困ったときに人に助けを求められるようになるためにも、自分の気持ちを伝える練習はとても大切です。

しかし、たとえ気持ちを上手に伝えられるようになっても、
それを「我慢」や「自己抑制」にすぐ繋げられるようになるわけではありません。
そこはゆっくり発達していく部分ですので、焦らずに見守っていきましょう。


4. 「視覚的なサポート」の有効性と教材の活用


発達障害のあるお子さんは、耳から入る情報(聴覚情報)よりも、目から入る情報(視覚情報)が得意なことが多いです(もちろん聴覚優位のお子さんもいます!)。

そのため、目から見て一瞬で理解したり提示できる、「視覚的なサポート」はお子さんのサポートになることが多いです。

「Dear Kids & Family」では、
子どもたちが自分の気持ちを指差しで教えてくれたり、相手の気持ちを想像するサポートになるような、イラストを中心としたSST教材や視覚支援グッズ(絵カードなど)を作っています。

これらの教材は「子どもを大人の想い通りに動かすため」ではなく、
子ども自身の力を引き出すこと
を目的としています。

  • 言葉で伝えるのが苦手なお子さんが、絵カードを通して「伝わった!」という成功体験を積み重ねる。
  • 言葉だけでは伝わりにくかったことを視覚的に伝えることで、子ども自身が理解して行動を選択する助けになる。

そんなきっかけや応援になればいいなと思いながら、日々作成しています。



🏢 【ご活用いただいている現場】 家庭用としてはもちろん、保育園・幼稚園・小学校の支援級・児童発達支援・療育センター・特別支援学校・放課後等デイサービス・言語聴覚士さんの言葉の支援など、日々子どもたちと向き合うたくさんの先生方にも広くご活用いただいています。

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