【臨床心理士が解説】子どもの生きづらさを減らす「SST」とは?

1. ある成人当事者の言葉


私はこれまで、発達特性のある多くの成人の方々とお話ししてきました。
その中で、幼少期から対人関係で深く悩まれてきたある方が、
ぽつりと漏らした言葉が深く印象に残っています。

「人には人の気持ちがあるなんて、子どもの頃は誰も教えてくれなかった。」
「大人になってから、周りの人にフィードバックをもらいながら一つずつ学びました」

私たちは日常の経験から、
他人の気持ちや社会のルールといった暗黙の了解のようなものを、
自然と身に付けていきます。

しかし特性のあるお子さんは、
ただ経験を積むだけではそれらを感覚的に学びづらい場合があります。

対人関係がうまくいかないのは、
“障がいがあること自体が原因”なのではなく、
ただ“適切なスキルを学ぶ機会がなかった(獲得していない)から”
と考えることができます。

その視点から、子どものうちから丁寧にスキルを身につけていくことで、

  • 「なぜだか分からないけど人とうまくいかない」
  • 「なぜだか分からないけど気づいたら人を怒らせている」
  • 「やっぱり自分はダメなんだ……」

というような、傷つきや自信を失ってしまう経験の予防につながります。
あらかじめ知ることで、失敗を避けるだけでなく、
「人と関わる楽しさ」をたくさん積み重ねていくことができるのです。

2. SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?

SST(ソーシャルスキルトレーニング:Social Skills Training)とは、
社会の中で自分らしく生きていくための
対人関係のスキルを学ぶ練習(トレーニング)のことです。

ここで大切なのは、ソーシャルスキルは
「お友達と仲良くしよう」という心構えやかけ声ではないということです。

「仲良くしたいけれど、どうすればいいか分からない」と悩む子どもたちに、
お友達の話をきちんと聞く具体的な方法や、
相手を傷つけない断り方、誘いを断られたときの心の整え方などを、
一つの『スキル』として分かりやすく教えます。

ソーシャルスキルは技術だからこそ、
自転車の乗り方の練習と同じで、繰り返し練習すれば身につけることができます。

ルールを「見てわかる形」で具体的に教えたり、
ロールプレイで楽しく取り組んでみたりすることで、
日常生活における子どもの生きづらさを減らしていくことができます。

3. 家庭や療育現場でSSTに取り組む3つのメリット

SSTを取り入れることで、
お子さまには以下のようなポジティブな変化が期待できます。

① 自分の気持ちや感情をコントロールしやすくなる
たとえば、「嫌だ!」という強い感情が湧いたとき、
怒鳴ったり叩いたりするのではなく
「言葉で相手に伝える方法(感情調整)」を学ぶことができます。

② 集団行動や社会のルールがスムーズに理解できる
・順番を待つ
・お友達が話しているときは静かに聞く
といったルールを事前に練習しておくことで、
園や学校生活での不要なトラブルを減らせます。

③ 「できた!」が増えて自己肯定感が育つ
事前にルールを伝えることなくいきなり叱ったり、
「人の気持ちも考えなさい」など曖昧に注意するのではなく、
あらかじめ「適切な行動」を具体的に伝えて練習するため
成功体験が積み重なり、お子さまの大きな自信に繋がります。

4. SSTの具体的な実践ヒント

SSTを行うときのコツは、勉強として教え込むのではなく、
遊び感覚で楽しく、お子さんの特性に合った方法で取り組むことです。

① ロールプレイング(劇ごっこ)をして、すぐに本番に臨む

劇ごっこ形式(ロールプレイ)で実際に練習をします。
例えば「お友達との貸し借り」の場面。

  1. 事前に「はさみの貸し借り」の練習(ロールプレイ)をする
  2. その直後に、お友達とはさみの貸し借りが必要な「工作」の活動を行う

このように、ロールプレイで練習した上で、
安全な環境のなかで学んだスキルをすぐに実践し、
成功体験を積める環境
を作ることも多いです。

お子さん同士の関わりなので、
現実には「貸してと言っても貸してもらえないこと」ももちろんあります。
しかし、学んだスキルを出せた瞬間にすかさず
「今の『貸して』、かっこよかったよ!ナイス!」などと、
プラスの声掛けやポジティブな反応を返して
あげます。

この即座のフィードバックが、
子どもたちの自信になり、次の成功へとつながっていきます。

② イラストやカード(視覚支援)で見通しを伝える

言葉だけで
「ちゃんとしなさい!」「ルールを守って」と言われても、
子どもにとっては抽象的で伝わりにくいことも少なくありません。

イラストなどを用いて、具体的&視覚的に伝えるのが効果切です。
このとき「良い例」「悪い例」とルールだけを押し付けるのではなく、
特性のあるお子さんが苦手としがちな『見通し』を持たせてあげることもポイントになります。

  • 💬 「こうすると、相手はこんな気持ちになって、こうなるかもね」
  • 💬 「こうすると、みんなで楽しく遊べるかもね」

というように、
自分の行動がもたらす『一歩先の未来(見通し)』をあらかじめ一緒に考えて、
お子さん自身に納得してもらった上で、
「次の行動を自分で選んでもらう」という主体的な視点も大切にしています。

5. SSTに関するよくある質問(FAQ)

Q1. SSTの練習の場(療育室や家庭)ではできるのに、
実際の場(学校や園)ではうまく使えません。

A. 心理学でいう「般化(はんか)」、
つまり『身につけた技術を、いつでも日常のリアルな場面で使えるようにする』ための工夫が必要です。

例えば、先ほどご紹介した「はさみの練習の直後に工作本番を行う」のように、練習から実践に落とし込むステップが効果的です。
また、家庭内だけで完結させるのではなく、家庭・療育先・園や小学校などで現在の課題を共有し、同じカードや同じ声掛けをいろんな場面で一緒に進めていくことも、般化を促します。

Q2. なぜ、子どもの頃(幼児期〜低学年)から行う必要があるのですか?

A. 脳の吸収力(可塑性)が非常に高い幼児期〜低学年のうちから、視覚支援で優しくアプローチしておくことで、自分らしく生きていくためのソーシャルスキルを無理なく獲得できるからです(早期介入)。
適切なスキルを学ぶ機会のないまま大きくなると、周囲から叱責されたり、孤立したりすることが増え、学童期以降に「自信喪失」「不登校」「うつ」といった二次障害を引き起こしてしまうケースもあります。
子どものうちから「できた!」「人と関わるって楽しい!」という体験を積み重ね、自己肯定感を守りながら進めていくことが大切です。

6. 現場のニーズと専門職の想いから生まれたSST教材

療育の現場で日々子どもたちと向き合う臨床心理士の私が、「家庭でなにかできることはないかな」という親御さんや、忙しい現場で時間や労力を節約しつつ質の高い支援をしたい指導員・セラピスト、スクールカウンセラーの方々のリアルな声を取り入れて、オリジナルのSST教材を作りました。

🛒 目的や年齢に合わせて選べるラインナップ

サクッとSST

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未就学〜小学生向け。
主に【感情】と【お友達とのコミュニケーション】に特化し、イラストでソーシャルスキルを視覚的に楽しく学べる冊子です。
シンプルな構成で日常のよくある場面を取り上げており、お子さまのペースに合わせて幅広い難易度で取り組めます。

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【対象のお悩み】ことばの遅れ、意思疎通、やりとり
【育まれる力】コミュニケーション力、表現力
カードを使って楽しく会話ややりとりを広げる、ことばやコミュニケーションの土台作りに最適なカード教材です。
子どもたちの食いつきNo,1! 言語聴覚士さんや保育士さんからも好評です。

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【対象のお悩み】集団行動、生活ルール、社会性
【育まれる力】社会性、感情のコントロール
園や学校での集団行動や生活ルールや対人関係、マナーなど。
暗黙の了解を、イラストを通じて丁寧に伝えるカードです。

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